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東京高等裁判所 昭和40年(行コ)24号 判決 1967年9月25日

神奈川県鎌倉市大船七七番地

控訴人

合資会社 ときわ

右代表者代表社員

村松万吉

神奈川県藤沢市朝日町一丁目一一番地

藤沢税務署内

被控訴人

藤沢税務署長

土田正顕

右指定代理人検事

川村俊雄

法務事務官 熊谷直樹

大蔵事務官 泉水一

同 渡辺清

右当事者間の法人税所得金額に対する更正決定取消請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が被控訴人に対し昭和三四年三月二五日付でした控訴人の昭和三二年四月一日から同三三年三月三一日に至る事業年度分の所得金額、法人税額の更正決定(ただし東京国税局長の審査決定により所得金額は金三七万六、三〇〇円、法人税額は金一三万一、七〇〇円とされ、右金額をこえる部分は既に取消されている)は所得金額金一三万四、三〇〇円、法人税額金四万七、〇〇〇円をこえる部分を取り消す。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、(控訴状には控訴の趣旨として「原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求める旨記載してあり、控訴人は当審第一回口頭弁論で右控訴状に基く控訴の趣旨を陳述しているけれども、控訴人の真の控訴の趣旨が上記摘示の通りであることは本件口頭弁論の全趣旨に照らして明らかである)被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実の主張、証拠の提出、援用および認否は、控訴人において、

「(一)すし類の売上計上洩れについて

被控訴人の推計計算が誤りであることは次のことから明らかである。即ち、酢の総使用量に対する打酢の使用割合は、これに先行するすし類以外の食品に用いられた酢の使用量、すし類に用いられた酢の総使用量、酢を必要とするすし種に用いられた酢の使用量、同じくがり酢、手酢等の使用量を求めることにより必然的に算出されるのである。

以下右方法により計算すると

(イ)  すし用飯米一釜(二升)に対する打酢の所要量が二合一勺であること、またすし用飯米からとれるすしの量が二六、六六七人前(食)であることはいずれも原判決認定のとおりである。

(ロ)  すし種のうち酢を必要とする魚に用いられるしめ酢、手酢及びがり(生茹)酢の使用量は、手酢一釜につき、一・五勺(乙第四号証)、がり酢、生茹一貫目につき一升(乙第五号証)、しめ酢、このしろ一貫目につき一升三合三勺(乙第五号証)こはだ一貫目につき一升二合である。

(ハ)  控訴人が係争年度に購入した「しめ魚」の種類及び数量

魚八商店から購入分

あじ 二七貫目

こはだ 一貫五〇〇匁

築地魚市場から購入分

さより 二貫六〇〇匁

こはだ 二九貫五〇〇匁

このしろ 一〇貫四〇〇匁

計 四二貫五〇〇匁

(ニ)  控訴人が係争年度に仕入れた生茹の量

一貫三〇〇匁

(ホ)  控訴人の食堂部におけるすし類の売上食数は被控訴人の主張によれば一万〇八八四食である。

(ヘ)  控訴人のすし以外の酢の物に用いられた酢の量は原判決認定のとおり一斗三升八合二勺である。

(ト)  そこで前記酢の総使用量一石九斗から右一斗三升八合二勺を控除すると、控訴人の係争年度におけるすし類に使用された酢の総使用量は一石七斗七升(合以下切上げ)である。

(チ)  ところで、控訴人のしめ酢の使用量は、前記(イ)ないし(ハ)から、しめ魚の総仕入量七一貫目、しめ酢のしめ魚一貫目に対する所要量一二六、五勺であつて、八斗八升八合(勺以下切捨)である。

(リ)  がり酢の使用量は前記(ロ)及び(二)から一斗三升三合である。

(ヌ)  打酢及び手酢の所要量は、前記(イ)及び(ホ)から食堂部における所要量を計算し、これに旅館部における被控訴人推計の売上食数二二四食に要する打酢及び手酢の量を加算すればよいわけで、

食堂部における打酢所要量は八斗五升七合(勺以下切捨)

旅館部における打酢所要量は一升七合(勺以下切捨)

以上打酢の全所要量は八斗七升四合である。

食堂部における手酢所要量は前記(ロ)及び(ホ)から六升一合二勺(勺未満切捨)

旅館部における手酢所要量は、前記旅館部における売上食数二二四食及び(イ)から一合二勺(勺未満切捨)

以上手酢の全所要量は六升二合四勺(勺未満切捨)

(ル)  以上(チ)、(リ)及び(ヌ)を合計すると、すし類の売上食数に対する酢の総所要量のみでも一石九斗六升七合となり、係争年度における酢の総使用量一石九斗を上廻ることになり、被控訴人の推計は失当である。

(二)米の仕入計上洩れについて

被控訴人の推計方式では循還理論となり、被控訴人のなした売上計上洩れ計算は以上のとおり誤りであるから、米の仕入計上洩れ計算も誤つている。」と述べ、

たほか、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

理由

当裁判所も控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は

『(控訴人の「すし類の売上計上洩れ」の主張について)

前記(一)の(ハ)控訴人が係争年度に購入した「しめ魚」の種類及び数量、同(一)の(ニ)控訴人が係争年度に仕入れた生茹の量ならびに控訴人が一日に使用する手酢の量につき、原審証人石井藤吉の証言中にはこれに沿うものもあるが、乙第一号証と比照し、これのみにては控訴人主張の右各数量を認めるに足らず、他に右各数量を認めるに足る資料はないし、控訴人主張の「がり酢、しめ酢及び手酢をそれぞれ別々に使用していること」を認めるに足る証拠はないところ、かえつて成立に争のない乙第四号証同第五号証ならびに原審証人大村公夫の証言によれば、「控訴人が営業している付近の同業者の殆んどは、しめ酢とがり酢に一度使用した酢を手酢として再度使用していること」が認められるから、控訴人主張の右推計は右各計算の基礎資料が不明である上、手酢の使用量が不明であるから合理的な推計方法とは言えず、控訴人の右主張は採用し難い。

(控訴人の「米の仕入計上洩れ」の主張について)

前記認定のとおり被控訴人の推計は適当であり、控訴人の右主張は採用し難い。』

と付加するほか、原判決の理由と同一であるからこれを引用する。

よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であるから、民事訴訟法第三八四条、第九五条第八九条に従い主文のとおり判決した。

(裁判長裁判官 高井常太郎 裁判官 満田文彦 裁判官 弓削孟)

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